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プロフィール|獣医師 今枝 奈緒美

Three f 代表
日本獣医生命科学大学卒
日本獣医皮膚科学会所属
勤務医として臨床に携わる傍ら、名古屋市と東京都の2つの動物病院にて皮膚科外来を担当。主に犬猫のアトピー性皮膚炎やアレルギー疾患の診療を得意とする。
ペットの皮膚トラブルに悩む飼い主様向けに、セミナー登壇・セミナー主催・皮膚科相談・関連商品の販売などを行う。

犬や猫のブラッシングは、「見た目をきれいにするためのお手入れ」と思われがちですが、実は皮膚や被毛の健康を維持するために欠かせないスキンケアのひとつです。特に換毛期には大量の毛が抜けるため、適切に抜け毛を取り除くことで皮膚トラブルの予防や快適な生活につながります。

抜け毛を取り除くことが大切な理由

犬や猫の被毛は、皮膚を外部の刺激や紫外線、寒暖差などから守る重要な役割を担っています。しかし、換毛期などに抜け毛が被毛内に多く残ると、毛の密度が高くなり、皮膚の通気性が低下します。その結果、湿気や皮脂がこもりやすくなり、膿皮症やマラセチア性皮膚炎などの皮膚感染症を起こしやすい環境が作られる可能性があります。また、皮脂やフケが蓄積しやすくなり、アトピー性皮膚炎などの皮膚疾患を悪化させる一因になることもあります。

さらに、長毛種だけでなく短毛種でも、抜け毛が絡まることで毛玉やもつれができる場合があります。毛玉は皮膚を引っ張って痛みや不快感を与えるだけでなく、皮膚の蒸れや炎症の原因にもなります。

猫や毛づくろいをよく行う犬では、抜け毛を大量に飲み込むことで毛球症を引き起こすことがあります。多くは嘔吐などの軽い症状で済みますが、重症例では消化管閉塞を起こし、手術が必要になるケースもあります。日頃から抜け毛を取り除くことは、こうしたリスクを減らすことにもつながります。

また、ブラッシングによる適度な皮膚への刺激は血流を促し、健康な皮膚環境の維持や新しい被毛の健やかな成長を助けると考えられています。

ブラッシングには健康チェックの役割も

ブラッシングには抜け毛を取り除くだけではないメリットがあります。毎日皮膚に触れることで、赤みや湿疹、しこり、ノミ・ダニ、傷などの異常に早く気付くことができます。皮膚病は早期発見・早期治療が重要であり、日常のブラッシングは健康チェックの機会にもなります。

さらに、散歩中に付着した花粉や砂ぼこり、草木などの汚れを取り除くことで皮膚への刺激を減らし、室内へ持ち込むアレルゲンを減らすことにも役立ちます。抜け毛が減ることで室内環境が清潔に保たれ、飼い主さんやご家族のアレルギー対策としてもメリットがあります。

効率よく抜け毛を除去するには専用ブラシがおすすめ

抜け毛を効率よく取り除くためには、アンダーコート除去に適した専用ブラシを使用することが効果的です。

一般的な抜け毛対策ブラシには、V字型の刃で被毛を引っ掛けながら抜け毛を取り除くタイプがあります。効率よく除去できる一方で、製品の構造や使い方によっては健康な被毛まで一緒に引き抜いてしまったり、皮膚へ負担がかかったりする場合があります。

一方、リファーレッシュブラシは、一本ずつ独立した縦型の歯を採用しており、歯と歯の間の深い隙間が被毛の奥まで入り込み、不要な抜け毛やアンダーコートを絡め取る構造になっています。健康な被毛への負担を抑えながら、不要な抜け毛を効率よく除去できる点が特徴です。

また、ヘッドの角度を調整できるため、首回りや足回りなど体のカーブにもフィットしやすく、飼い主さんの手首への負担軽減にも配慮されています。さらに、集めた毛をワンプッシュで捨てられる機能を備えたタイプでは、抜け毛の飛散を防ぎながら短時間でブラッシングを行うことができます。

獣医師としてブラシを選ぶ際に重要だと考えているのは、「どれだけ多く毛が取れるか」ではなく、「健康な皮膚や被毛への負担をできるだけ抑えながら、不要な抜け毛だけを効率よく除去できるか」という点です。その意味でも、ブラシの構造や使いやすさは製品選びの大切なポイントになります。

正しいブラッシング方法

ブラッシングを行う際は、まずコームやスリッカーブラシで毛玉やもつれを優しくほぐしておきます。被毛は乾いた状態で行うのが理想です。

ブラシは毛の流れに沿って、頭から尾に向かって優しく動かします。いきなり根元からとかすのではなく、毛先、中間、根元の順に少しずつブラシを通すと、被毛への負担を軽減できます。同じ場所を何度も繰り返しとかすことは避け、皮膚をこすらないよう力を入れ過ぎないことも大切です。

また、逆毛にとかしたり、毛玉を無理に引っ張ったりすると皮膚を傷つけ、ブラッシングを嫌がる原因になります。皮膚に炎症や傷がある場合、極端に痩せて皮膚が薄い動物、高齢動物では特に慎重に行いましょう。嫌がる様子がある場合は無理をせず、一度に長時間行うのではなく短時間で終えることが大切です。

ブラッシングの頻度は換毛期であれば週1~2回を目安に、被毛の状態に合わせて調整しましょう。過度なブラッシングは健康な毛まで取り除き、薄毛や皮膚への負担につながることもあるため、適度な頻度を心掛けることが大切です。

毎日のブラッシングは、美容のためだけではなく、皮膚病の予防や健康管理、そして愛犬・愛猫とのコミュニケーションにもつながる大切な習慣です。ペットに合ったブラシを選び、正しい方法でケアを続けることで、健康な皮膚と美しい被毛を維持していきましょう。

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